クリニック開業での物件の探し方・選び方│良い物件の条件、チェック項目、診療圏調査、適正な家賃とは | 医院開業バンク

コラム

2023.08.25

クリニック開業での物件の探し方・選び方│良い物件の条件、チェック項目、診療圏調査、適正な家賃とは

クリニック開業の成功の可否を握るのが「物件」。ただ、100点満点の物件に巡り合うことは無いという現実を踏まえると決め手は無数に存在し、「物件が見つからない」「決められない」は開業を断念するポイントにもなっています。

当社は全国の開業物件情報にネットワークを張り巡らし、唯一無二の承継物件から、駅前のテナント物件、大手ディベロッパーや調剤薬局のモール案件など、多数の開業物件を収集しています。そして、先生のクリニックのコンセプトをともに作成しながら、数ある物件の中からご希望に合った物件を決めるまでまで、納得のいく物件選びのサポートをしています。ぜひお気軽にご相談ください。

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よい開業物件の探し方・選び方とは

クリニック開業/閉院のための総合情報プラットフォーム 医院開業バンク 編集部です。

クリニック開業のポイントとなる「物件探し」。開業のご支援を行う私たちのもとにも、物件探しのご依頼は当然のことながら、「良い物件の条件を教えて?」「物件ってどう探したらいいの?」「この物件での収支を計算してほしい」といった相談を多くいただきます。

そこで今回は、クリニック開業における物件の探し方や選び方、良い物件の条件や実際に物件を見る際のチェックポイントまで詳しく説明します。

【参考記事】:クリニック開業準備にかかる期間やスケジュールについて解説
【参考記事】:医療モールとは|開業検討時に知っておきたいメリット・デメリットを解説

開業おいての物件選びとは

開業「成功」のポイント
開業においての物件選びは、集患数はもちろんのこと、家賃の大小による収支への影響をはじめ、開業の成否を左右する大切な要素のひとつです。「成功のカギ」と言えるでしょう。

開業「断念」のポイント
一方で、開業を目指す医師においても希望の物件が見つからず開業を断念するケースが非常に多く、開業へのボトルネックとも言えます。

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開業物件のタイプ

ビルテナント
都市部で最も一般的といえるのが、ビルテナント型物件を利用した開業です。ビルテナントは駅前などの好立地に多く、また戸建てでの開業に比べると比較的低コストで開業できるというメリットがあります。

一方で、あくまでも部屋を借りる形のため、そもそも設備等がクリニックの運営に適してなかったり、ビルオーナーの変更やビルの建て替えなどによる退去リスクがある点はデメリットといえます。

医療モール
診療科の異なる複数のクリニックと調剤薬局が1つの建物などに集合している医療施設が医療モールです。

医療機関が入ることを前提としているため、クリニックに適した内装や設備となっている点や、複数のクリニックが集まることで集患の相乗効果を期待できる点はメリットです。

ただし、施設内の他のクリニックと診療内容が重複しないかどうかは確認・注意が必要です。

駅ビルや商業施設の一角に集まっているものを医療モール、一つのビルに集まっているものを医療ビルと区別する場合もあります。

医療ビレッジ
戸建てタイプのクリニックが1カ所に集まっているタイプを医療ビレッジと言います。幹線道路沿いに作られることが多く、共用の駐車スペースを囲む形で戸建てクリニックが配置される形が一般的です。

基本的には、計画段階から医療施設を前提に建築するため、ビルテナントと比べると設計の自由度は高く、外装や内装などをクリニックのコンセプトに合わせやすいと言えます。

単独戸建て
戸建てタイプの物件は郊外や住宅地などに多くみられます。自己資金で土地を購入または借りて建物を建築し「自宅兼診療所」として開業するケースや、土地オーナーが建てた建物を借りて「建て貸し」で開業するケースもあります。

当然のことながら、自分で建てる場合には、外観や内装デザインなどを自由に決められます。また、建て貸しの場合でも、内装は比較的自由に決められるケースが多いです。

ただし、土地や建物を所有している場合でなければ、多額の初期費用を必要とし、開業にかかる期間も長くなってしまうというデメリットがあります。また、院外処方を考えている場合には、調剤薬局の誘致もポイントです。

開業物件の探し方・選び方

開業物件の取得・契約方法

建物の一室を借りる
自己負担はほぼ家賃のみですが、都市部では駅前が中心で賃料が高い場合があります。

既存の建物一棟を借りる
家賃負担のみですが、数はそれほど多くはありません。また、クリニックの居抜きで入る場合には前のクリニックの診療科や口コミ・イメージには注意が必要です。

土地を買って自分で建物を建てる
自己資金または融資で土地と建物代両方を用意する必要があるため、土地を持っていない場合は多額の費用がかかります。

土地のみ借りて建物は自分で建てる
土地には賃料がかかります。建物分には自己資金または融資が必要となります。

土地+新たに建てた建物を借りる
土地・建物のオーナーに対して賃料を支払うことになります。

立地の決め方=よい立地とは?

対象となる患者が多い、増加の見込みがある
需要(=患者の医療のニーズ)が供給(=医療機関数)を上回っていると、エリア内の医療機関数に関わらず集患が見込めます。

年齢別の人口構成や人口動態、診療圏調査を参考に判断することになります。

競合が少ない
人口が多いエリアでも競合となるクリニックが多ければ集患は難しくなるため、競合の数は大切な要素です。

認知されやすい(視認性が高い)

建物の1階や商業施設内などは患者から認知されやすい立地と言えます。逆に、駅前など人通りが多い場所でも、建物が奥まっていたり階数が高い場合には、視認性が低くなります。

ただし、診療科によっては認知されにくい方が良いというケースもありますので、ご自身の診療科に応じて検討が必要です。

自分自身にゆかりがある
まったく見知らぬ土地よりは、ご自身や家族の出身地、出身大学や勤務していた病院の近隣など、ご自身にゆかりがある土地のほうが外部環境や患者層などへの理解があり、開業準備・運営もスムーズに運びます。

立地を決めるポイント=診療圏調査

診療圏調査とは?
ある場所で開業した場合に、1日あたりどれくらいの外来患者数が見込まれるのか、「その候補地のポテンシャル=推計患者数」を把握するのが診療圏調査です。金融機関との融資交渉にも必要となります。

立地を決めるポイント=診療圏調査

立地を決めるポイント=診療圏調査

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物件の探し方

・WEBサイトで探す
・不動産会社に相談する
・開業支援会社に依頼する
・クリニック開業専門サイトで探す

物件選びのポイント

アクセスが良い
交通の利便性は集患を左右します。最寄りの駅やバス停の場所、運行本数はチェックが必要です。公共交通機関が無いエリアでは駐車場の有無なども必ず確認しましょう。

また、アクセスの良し悪しは採用にも影響します。

入口およびアプローチが分かりやすい
どんなに良い立地にあっても入り口が分かりにくければ人が入りにくくなることから、入り口のわかりやすさやクリニックまでの経路が分かりやすいのかも重要なポイントです。

診療内容に適した間取り、広さ、電気・水回り等
クリニックの誘致を前提とした医療モールであれば満たしているケースが多いですが、ビルテナントや建て貸しの場合には確認が必要です。

賃料が適切
患者が集まり、アクセスが良く、視認性の高い物件は当然のことながら家賃が高く、近隣に競合も多いことが想定されます。事業計画を踏まえ「売上比10%以下」を目安に、適切な賃料の物件を選ぶ必要があります。

自分自身が通いやすい
開業後はほぼ毎日クリニックに通うことになります。よってご自身の「通いやすさ」も大切なポイントです。

開業コンサルタントに相談する

物件選びチェックポイント

・広さ
・建物内の設備
・出入口
・天井の高さ
・水回り
・バリアフリー
・耐荷重
・耐震構造
・消防設備
・アスベストの有無
・B工事
・看板設置の可否
・同じビル・施設内のテナント

家賃にはいくらまでかけられる?

物件探しの際に最も多くいただくのが「賃料」に関連する質問・相談です。一般的には賃料は「売上の10%以下」が目安・理想とされています。

ただ、あくまで理想ですので、ご自身の目指すクリニック像や診療のスタイル、分院展開の計画などを踏まえ、それ以上/それ以下で設定されるケースもあるでしょう。

賃貸契約時の注意点

契約期間
物件が定期借家の場合は契約期間を必ず確認しましょう。

定期借家の場合、契約期間が10年以下に設定されていることが多いです。ただし、将来的に医療法人化を計画している場合には、長期間賃借契約を継続する必要があるため、最低でも15年以上まで引き延ばせるのが理想です。また、一般的には、借入返済と同等の契約期間が望ましいとされています。

契約期間満了時の更新条件
普通借家契約の場合は賃貸借期間の満了の際には、契約終了または継続(更新)のいずれかを選択することになります。

一方で、定期借家契約の場合は契約更新がなく、契約期間の満了により契約は終了することから、継続して借りたい場合には再度契約を締結する必要があります。

また、普通借家契約の更新時には更新料を求められるケースもありますので、契約の際に確認をしておきましょう。

引き渡し時期および賃料発生のタイミング
築年数によっては家賃交渉や保証金の減額、内装工事期間中の賃料の免除、フリーレントなどに応じてくれることもあります。

増築や改造などの制限について
医療法上の施設基準や医療機器の設置にかかる制約をクリアするために、増築や改築が必要になる場合があります。

ビルテナントをはじめとした賃貸物件ではオーナーの同意なしに増築や改築を行うことができないため、あらかじめ確認しておくことが必要です。

明け渡し条件
クリニックの場合、原状復帰が困難なケースも多いため、「退去時の原状復帰が必要かどうか」についても、事前に確認しておくといいでしょう。

まとめ

クリニック・医院開業の際の物件の選び方と探し方について詳しくみてきました。

希望の物件が見つからず開業を断念されるケースに共通しているのは、「希望の優先順位がつけられておらず」、「100点満点の物件を探しつづけている」というケースです。

また、希望の優先順位がつけられていないことから、「物件を見れば見るほど希望条件が増える」も断念につながるケースも多くあります。

何においても言えることですが、すべての条件を満たす100点満点のものが見つかることはまずありません。

大切なことは、「誰に」「どのような医療を提供したい」のか、クリニックの方向性をしっかり決めることです。これが物件の希望条件の優先順位を決めるものさしになります。

クリニックの方向性については、初めて考えるという方が大半です。思考の整理や相談相手として専門家に相談されるのも一つの手です。

開業物件の探し方・選び方

株式会社日本メディカルキャリア ライフ支援事業部

福松 洋祐

医師人生の集大成とも言える「クリニック開業」という機会に多く携わって参りました。今後開業を検討される先生方に少しでも多くの選択肢をお示しできるようご支援いたします。

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